薬剤師が対人業務に注力できる仕組みと組織規模
M’sファーマ株式会社が2012年に立ち上げたくれよん薬局 堺店は、南大阪エリアで6店舗を運営する調剤薬局グループの一角を担っている。薬剤師27名、管理栄養士3名を含む総勢58名という体制は、地域薬局としてはかなりの規模だろう。調剤補助装置や監査システムへの設備投資を進め、薬剤師が機械的な作業から離れて患者との対話に時間を割ける環境を構築してきた。ECRSの視点で業務フローを見直す取り組みも継続しており、調剤の正確性とスピードの両面で改善が進んでいる。
個人的には、薬局でここまで明確にシステム投資と業務改善のサイクルを回している点が印象的だった。保険調剤だけでなく、居宅介護支援や経営コンサルティング、採用代行にまで事業領域を広げており、いわゆる「薬を渡すだけの場所」とは異なる存在感を放つ。職業紹介事業として「くれよんジョブサポート」を展開し、医療介護分野の人材確保にも関与している。これだけの事業を並行して動かしている薬局は、南大阪でもそう多くないはずだ。
在宅療養と医療DXへの実務的な対応
処方せんの受付・調剤にとどまらず、個人宅や介護施設へ薬を届ける在宅対応が日常業務の一部として組み込まれている。往診への同行、残薬の管理、配薬のサポートまで請け負うことで、通院が難しくなった患者の生活を薬の面から下支えしている。マイナンバーカードによる保険証利用や電子処方箋にも対応済みで、受付時の手続きが簡略化されたという声が利用者から目立つ。処方情報の電子的な連携により、複数の医療機関を受診している患者の薬歴確認も迅速になった。
災害時や感染症の流行期にも薬の供給を止めない体制を整えている点は、2020年以降とくに注目されるようになった領域だ。行政や近隣の医療機関との連携ルートをあらかじめ確保し、非常時にも調剤機能を維持する準備が進められている。平時の在宅訪問で培った地域とのつながりが、緊急時の情報伝達にもそのまま活きるという構造になっている。こうした備えがあるからこそ安心して任せられると感じる利用者も多い。
管理栄養士と薬剤師が連動する栄養相談
3名の管理栄養士が薬剤師と服薬データを共有しながら栄養相談に応じる仕組みは、くれよん薬局 堺店の看板サービスのひとつだ。処方薬との相互作用や食事制限を踏まえたうえで、年齢や家族構成、仕事のリズムに合わせた食事プランを一緒に考えてくれる。在宅での相談やオンラインにも対応しているため、足を運べない方でも継続しやすい。自治体から依頼を受けて開催する栄養教室や講座にも実績がある。
たとえば、糖尿病で複数の薬を服用している高齢者が「何を食べていいかわからない」と相談に訪れるケースでは、薬剤師が処方内容を確認したうえで管理栄養士が具体的な献立案を提示するという流れになる。薬の効果を食事面から支えるという発想は、単独の栄養指導では実現しにくい。来局者からは「薬と食事をまとめて聞けるので二度手間にならない」という反応が寄せられている。こうした一体型の相談窓口は、生活習慣病を抱える方にとって実用的な選択肢になっている。
地域のかかりつけ薬局として掲げる方針
くれよん薬局 堺店が打ち出しているのは、薬の受け渡しだけでなく日常の小さな不安にも応じる「かかりつけ薬局」としての役割だ。患者のライフスタイルや家庭環境を把握したうえで提案を組み立てるスタンスは、長く通う利用者ほどその効果を実感しやすいだろう。関わるすべての人と想いを共有するという理念が、スタッフ一人ひとりの接客姿勢にまで浸透している。現状維持ではなく常に改善を重ねていく方針を経営の軸に据えている。
医療介護事業者向けの採用・定着支援を手がけるくれよんジョブサポート事業では、人材確保に苦戦する地域の施設やクリニックの課題に踏み込んでいる。薬局の枠組みを越えた活動は、南大阪の医療介護インフラそのものを維持する仕事といってもいい。「薬局にこんなことまで相談できるとは思わなかった」という事業者側の反応も少なくないようだ。調剤・栄養・人材という三つの軸を同時に回すことで、地域全体の暮らしを底上げする構想が動き続けている。



